数ある着物の種類のなかで最もシンプルなデザインなのが、色無地です。他の着物に比べるとあまりにもシンプルなために、買取に出してもそれほど金額はつかないだろうと思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その考えは間違っています。
着物買取市場において、色無地は十分に需要のある着物なのです。今回は、色無地の買取相場、特徴や買取の際のポイントなどについて、詳しく解説していきましょう。
色無地の特徴・歴史
色無地とはどのような着物なのでしょうか。その特徴と歴史について説明しましょう。
特徴
色無地とは、文字通り柄のない着物です。柄がなければすべて色無地というわけではなく、黒以外の色で無地のものを指します。柄がなくても生地の色が黒の場合、それは色無地とはいいません。
華やかな柄があしらわれた着物と比較した場合、派手さはありませんが、あらゆるシチュエーションに対応できて、若い人から年配の人までどんな年齢の人でも違和感なく着こなせることがメリットといえます。
歴史
色無地の歴史は江戸時代まで遡ります。この時代は貧富の差の激しい身分制度により、庶民は高価で派手な服を着ることができませんでした。そのため、庶民の間であらたまった場所に出向く際は、比較的安価でシンプルな色無地が愛用されることになります。
色無地はシンプルな見た目のため汎用性も高く、さまざまな場所で使われたのです。そして色無地は、この時代に確立された茶道の場でも活躍しました。派手さを好まない「わびさび」を信念とした茶道の世界では、質素であることこそが美学とされています。
色無地であれば、そのような茶道の質素ながらも品のある芸術性を邪魔することなく、調和することが可能です。そして、その美学は現在も息づいており、茶道や生け花、和装で参加するお茶会などの集いでも、色無地は愛用されているのです。
色無地の種類
色無地にはさまざまな種類があり「袷(あわせ)・単衣(ひとえ)・絽(ろ)」という3タイプに分類されます。この3つは季節の変化に合わせて着用する仕組みで、袷は春から秋、単衣は、初夏と初秋、絽は真夏という決まりになっています。
しかし、この決まりは今のように冷暖房の設備が充実していない時代の風習だったので、現在はそれほど重要ではないと考えられています。ただ、着物に関する基礎知識として頭に入れておいても無駄にはなりません。
色無地は何も柄がないと思われていますが、実はよく見ると凸凹とした柄があり、このような柄は「地紋」と呼ばれています。地紋の種類は以下の通りです。
・流水:結婚や葬式にて着用
・鶴、亀、松竹梅:結婚などのめでたい席にて着用
・光沢があり控えめな模様:お茶の席などで着用
また、地紋が入っていない色無地はより汎用性が高く、冠婚葬祭の場で着用しても問題ありません。
そして、「紋」の存在も色無地では重要な要素です。色無地は紋の数によって格式が変化します。紋の数は五つ・三つ・一つの3種類で、五つ紋は背中、後ろ袖、胸、三つ紋は背中と後ろ袖、一つ紋は背中につく決まりです。五つ紋は最も格式が高いので一般人が使用する機会はなく、中古市場にもそれほど出回りません。
色無地の相場
色無地の買取相場は、以下になります。
・無名ブランド(状態が良い):3,000〜8,000円
・無名ブランド(状態が悪い):1,000〜3,000円
・有名作家が手がけたもの:10,000円〜
色無地の買取の場合、状態が良い・悪いに関わらず紋が入っているものであれば、査定額はアップする傾向です。有名作家が手がけたもの、伝統工芸品であれば、状態が悪くても高額査定になる可能性は高いといえるでしょう。
高額買取が期待できる色無地の特徴
高額買取になる可能性の高い色無地はどういうタイプなのか、次より説明しましょう。
綿100%の色無地
色無地に限らず、着物はその素材によって査定額が変わり、ポリエステルなどの化学繊維素材は高額の査定額がつくことはほとんどありません。着物買取市場で価値のある素材は、正絹(綿100%)の色無地です。
正絹でつくった色無地は、ポリエステルなどの素材にはない肌触り、品のある光沢が特徴です。中古市場でも常にニーズのある人気素材なので、状態が悪くても高額査定額になる可能性は高くなります。
また、化学繊維素材の色無地も決して不人気というわけではありません。このような素材の色無地は販売価格自体が安価なので高い買取金額にはなりませんが、洗濯可能・休肝速乾性が高いなどのメリットがあり、買取市場でも十分にニーズがあります。決して買取不可にはならないので、買取に出してみるといいでしょう。
一色揃っている色無地
色無地以外に和装小物が複数あった場合、それをセットで買取に出すと通常より高額買取になる可能性が高いです。着物愛好家は、着物単品でなく和装小物にも凝る傾向があります。着物の美しさを際立たせる各種アイテムは、和装において重要な要素なのです。
着物と一緒に和装小物も購入する方は多いので、買取店も和装小物を買取り在庫を充実させたいと考えています。和装小物の種類は、帯揚げ、帯締め、帯留め、足袋、草履、和装バック、巾着、かんざしなどです。これら和装小物の個別の単価は安いですが、セットでまとめて買取に出せば高額査定が期待できるでしょう。
大きなサイズの色無地
色無地に限らず、着物の中古市場では大きなサイズの着物にニーズがあります。大きなサイズの着物は、着てみてサイズが合わない場合、仕立て直してその人のサイズに合わせることが可能だからです。しかし、小さいサイズの着物にはそれができません。
昔と違い現在は高身長の女性も珍しくないので、大きなサイズの色無地は高額査定が期待できます。
色無地を高く売るコツ
色無地の着物を買取に出す場合、少しでも状態を良くするために、見た目をきれいにしょうと考えている人もいるでしょう。その考えは間違っていませんが、きれいにする方法のなかでもクリーニングに出すのは、やってはいけない行為です。
合成繊維の色無地であれば問題ありませんが、天然繊維でつくられた色無地はデリケートなので、クリーニングをした場合は生地に相当な負荷がかかります。クリーニングに出せば表面の汚れなどは落ちるかもしれませんが、糸のほつれ、シワなどが発生するでしょう。
そのような状態になれば、価値のある色無地であっても査定額が下がってしまう結果になります。また安価で買取が成立した場合、買取金額からクリーニング代を引いた場合、手元に残るのはわずかな金額となるでしょう。
着物買取の専門店は、買取をした着物を着物専用のクリーニング店と提携していることが多いです。買取をした着物に汚れがあってもクリーニングできれいにして市場に出すという手順を踏むので、自分でクリーニングをする必要はありません。
ただし、買取に出す前にきれいにすることは決して悪いことではありません。陰干しをするなどして、クリーニング以外のやり方で綺麗にしておきましょう。
まとめ
シンプルで素朴な味わいのある色無地は、汎用性のある優れた着物です。他の着物に比べると華やかさは下がりますが、どんな着こなしにも合うので着物業界では普遍的な人気を誇っています。
そのため中古市場でも常にニーズのある品物なので、遺品整理などで色無地を発見した場合、着物買取の専門店にお任せしてみてはいかがでしょうか。専門店であれば、着物のスペシャリストが親切・丁寧に対応してくれるので、初めての着物買取でも安心です。